ご自宅や所有している不動産で自殺が発生したら、いわゆる事故物件となってしまいます。売れないことはありませんが、自殺物件の売却に関しては、金額はもちろん、他にも通常物件と比較してさまざまなハードルがあるのも事実です。
事故物件の売却方法として“仲介”と“買取”という2つの選択肢がありますが、どちらがいいかは誰も教えてくれません。とりあえず不動産屋をまわって、売れそうな会社にお願いするという方がほとんどでしょう。
実際に訳あり物件買取センターでは自殺が発生した事故物件の売買が成立している事例も数多くあります。実例も交えながら自殺物件買取に関する不動産業界の裏側について解説します。
目次
自殺起因の事故物件売却に成功!
まずは弊社の実例についてご紹介します。神奈川県内のとある女性の方からご相談いただきました。旦那さんが自宅マンションで自ら命を絶たれ、事故物件になってしまったのです。
その後相談者さまは生活に困窮され、固定資産税が支払えず、税務署から物件の差し押さえ通知が届いている状況。税金だけでなく、相続登記や残置物処理などもできておらず、マンションの管理費や修繕費の滞納など、多数の物件に関わる支払いの滞納がありました。売却するにも引っ越し費用が捻出できず、まさに八方塞がり。露頭に迷う寸前という状況で、藁にもすがる想いで訳あり物件買取センターにご相談いただいたのです。
弊社としてはまず売却できる状況に改善することを最優先に考えました。かなり困られている状況だったので、上記の費用はすべて訳あり物件買取センター側で負担させていただいたのです。
まずは税務署に同行して滞納分の税金を支払い、マンションの管理費や修繕費の滞納分も管理会社や大家さんに一緒に頭を下げに行き、相続登記の手続きもお手伝いしました。さらに、物件を手放せば住むところがなくなってしまうので、引越し先が決まるまで引き渡しを待ち、引越し費用と新しい物件の契約金はすべて弊社で負担しました。その上で、当初の査定額よりさらに100万円上乗せして買取させていただきました。
事故物件はただの物件ではありません。多くの方は苦しみや悲しみを抱えながら相談に来られ、不動産会社の対応次第でこれからの人生が大きく変わってしまいます。商売としてやっているなら、断ることもできるでしょう。でも、私たちは事故物件の背景にあるものを知っているから、相談者さまに全力で向き合い、できることはすべてやり、物件売買以外のこともお手伝いしています。これが一般的な不動産会社と訳あり物件買取センターの違いです。
まずは自殺物件であってもあきらめないでください。買取ってくれる会社は必ずあるはずです。
1年の自殺件数をご存知ですか?
毎日のようにテレビや新聞、ネットなどで自殺のニュースを見聞きします。最近では芸能人や著名人が自ら命を絶たれるケースも少なくありません。
厚生労働省がまとめた『平成29年度の自殺の状況』によると、平成29年の自殺者数は2万1,321件でした。性別は69.5%が男性です。年代別では40歳代が17.2%、50歳代が16.9%。働き盛り・子育て真っ只中の世代の方の自殺が目立っています。
動機はもっとも多いのが「健康問題」で1万0,778人、「経済・生活問題」が3,464人、「家庭問題」が3,179人、「勤務問題」が1,991人です。
亡くなった場所は58.8%が自宅とされています。あくまで理論値ではありますが平成29年には12,537軒もの不動産が自殺によって事故物件化しているのです。
実はこれだけ困っている人がいる
事故物件の数だけ、それによって困っている方もいます。身内あるいは物件の住民が自ら命を落とすという選択をされ、悲しい想いをされている。さらに、追い打ちをかけるように煩雑な相続手続きや名義変更などの手続きを余儀なくされ、固定資産税など税金の支払いや管理費、修繕費などの負担をしなければならない。今回ご紹介した相談者さまのように、収入が減ってすべての負担がのしかかり、金銭的に困窮されている方も少なくありません。
この記事を見られている方の中にはそういった状況に追い込まれている方もいらっしゃるかと思います。また、今は不自由ない平穏な暮らしをしていたとしても、思わぬ病気や怪我、あるいは近年だとコロナ禍によるリストラや収入の減少など経済的に困窮し、精神的に追い詰められる状況に陥るリスクは十分にあります。自殺という問題は決して他人事ではありません。
自殺物件の相場はどのくらい
結論から言うと相場というものはありません。それぞれの物件の立地やコンディションなどの事情によってことなるからです。ただし、大雑把に言うと周辺の物件の1/2にまで下がってしまう傾向があります。よほどのことがない限り、通常の価格で売れることはないでしょう。場合によっては不動産会社に門前払いをされる可能性があります。
仮に売れたとしても、上記はあくまで「売却額」の話です。自殺物件を売却するためには特殊清掃や残置物の撤去、相続登記などの費用も必要となります。多額の経費がかかり、手元に残るのは二束三文というケースも少なくありません。
安値でしか売れない、売るためには費用がかかる。こうした状況が親族を亡くされて悲しみに暮れ、経済的に困窮している方に容赦なく襲いかかるのです。
【誰も教えてくれない】自殺物件売却のコツ
事故物件を売却する上で考えるべきことは「いくらで売れるか?(査定額)」ではなく、「最終的に自分の手元にいくら残るのか?(売却益)」ということです。
前述のとおり、自殺物件を売却する際にはさまざまな経費がかかります。物件を売却して得たお金を生活の糧にしようと考えていても、経費がかかって赤字になり、かえって困窮してしまうケースも想定されます。必ず売却額から経費を差し引いた売却益を考えましょう。
特に厄介なのは「諸経費」と呼ばれるものです。不動産業界ではどうしても売り主である一般人が損しやすい仕組みが隠されているのです。その裏事情をこれから暴露します。
【マル秘】不動産業者が隠している自殺物件買取の裏側
自殺物件を売却する際には、不動産会社側のやり方を知っておかないと落とし穴に陥る危険性が高くなってしまいますのでご注意ください。ここからは数々の事故物件を専門的に取り扱ってきた訳あり物件買取センターだからこそ知る、事故物件買取の裏側をお話しします。
仲介不動産会社の場合
不動産仲介会社を通じて物件を売却する場合には契約不適合責任について注意が必要です。仲介の場合、売却相手は一般消費者(入居者もしくは不動産賃貸経営を行う個人)となり、契約不適合責任が適用されます。万が一売却時点で建物や土地に欠陥があった場合、買い主は損害賠償や修繕費用の支払い、代金の減額、契約解除などが請求できます。
責任期間は最長10年であり、引き渡すときにはわからなかったけど、数年後に天井を剥がしてみたら雨漏りが見つかったというケースに関しても修繕費を負担しなければいけません。こうしたケースは結構あり、高額な費用が請求されるケースが多いです。
そもそも仲介ではなかなか事故物件は売れません。1ヶ月経っても売れる見込みがない場合、仲介会社は物件を営業してくれない・紹介すらしてくれなくなってしまいます。最近ではコストが安い事故物件の人気が高くなっているというニュースもありますが、これはあくまで賃貸で「借りる」という話。物件を「買う」という市場において、事故物件は全然人気ではなく、敬遠されているのが実情です。また、高齢者の自然死や孤独死ならまだしも、自殺となると一気にハードルは上がります。
このように、仲介ではまず自殺物件を売るのが難しく、仮に売れたとしても多額の費用がかかるリスクが極めて高くなります。ちなみに、事故物件は告知義務が生じ、物件情報に「心理的瑕疵あり」という記載などが必要となります。誤魔化したり隠したりすると後々トラブルにもなりかねませんのでご注意ください。
不動産買取会社の場合
「不動産を買取ります」と謳っていても、実際は仲介だったケースも少なくありません。その場合、前項のようなリスクが発生します。特に支払いに関して「手付金」と「全額支払い」の2段階に分けている会社は仲介会社である可能性が大です。
売買契約成立後に契約不適合責任を持ち出して買取価格をどんどん引き下げてくる、残置物の撤去や特殊清掃などの費用を請求してくる、あるいは事前に「諸経費をそちらで負担をしてくれ」と言ってくる業者も存在します。こうした会社に物件を売ってしまうと、実際の売却金額が売買契約時の提示金額よりも大幅に下回ってしまうことにもなりかねません。
多くの方、特に不動産の売却がはじめての方は、「売買契約を結んだらゴール」と考えがちですが、実は悪質な業者にとってはここからが利益を搾り取るスタートなのです。
自殺物件売却までのハードル
事故物件は売ろうと思ってそのままの状態で売れるようなものではありません。仲介会社はもちろんですが、買取業者であったとしても基本的に以下のような費用は売り主負担となります。
- 残置物処理費用
- 特殊清掃費用
- 相続登記費用(これをしないと売却手続き自体できない)
残置物撤去とは家具や家電、照明器具などのことを指します。基本的に物件を売却する場合は今まで使っていたものをすべて撤去しなければいけません。
特殊清掃費用は人が亡くなった部屋をきれいにする専門的な清掃作業です。体液や汚れ、シミの除去、ゴミの撤去、消臭・消毒作業などを行います。場合によってはリフォームやリノベーションも必要となります。
相続登記は故人から売り主に物件の名義を変更することです。法務局で手続きを行います。これを行わないと売却すらできません。
多くの費用と手間をかけてこれらの作業・手続きを行い、ようやく自殺物件が売れる状態になるのです。
盲点:売却に併せて発生する別の支出
自殺物件でかかる費用はこれだけではありません。上記はあくまで最低限のものです。場合によっては以下のような費用がかかります。ご自身があてはまればこれらも考慮しなければいけません。
- 管理費・修繕費未納分(マンション・アパートなどの場合)
- 固定資産税未納分(支払っていない場合)
- 引越し先費用と引越し先の契約金(仲介手数料・家賃初月分or2ヶ月分・敷金・礼金)
特に故人が亡くなって時間が経過している、あるいは相続が遅れた場合はマンションやアパートの管理費・修繕費、固定資産税の未納分を支払わなければなりません。また、物件を売却した後の住まいに引っ越すための引越し費用や引越し先の契約金も必要です。
物件が二束三文でしか売れず、このように数々の経費の支払いを行った結果、赤字になってしまうケースは非常に多くあります。さらに、追加費用の支払いや契約不適合責任を理由にした金銭要求、買取代金の減額をされたとなると生活が立ち行かなくなってしまうという事態にもなりかねません。
「こんなに費用の捻出はできないよ」という方に必見!
自殺物件を売却する際には、「いくら手元に残るのか?を考える」「売却先に注意する」ということが非常に重要となってきます。特に経費については思った以上にかかります。今回ご紹介した事例のお客さまも経費の支払いがかさんで物件を売ろうにも売れない状況に陥っていたため、訳あり物件買取センターで負担させていただきました。
ご相談者さまに物件売却で得た利益を今後の人生に有効に活用していただきたいという想いから、基本的に以下のような経費はすべて弊社で負担いたします。
- 残置物処理
- 特殊清掃
- 相続登記
- 未納分の管理費と修繕費
- 固定資産税
- 引っ越し費用と引越し先の契約金
また、契約不適合責任は完全に免責です。後から費用を請求したり契約を解除したりといったことはございませんのでご安心ください。自殺物件でお悩みなら、ご自身だけで抱え込まずに、訳あり物件買取センターにご相談いただければ幸いです。
事故物件の買取に関してもっと知りたい・相談してみたいという方は「事故物件の買取」もご覧ください。
宮野 啓一
株式会社ティー・エム・プランニング 代表取締役
国内 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:150件 |
国内 | 訳あり物件売買取引件数:1150件 |
海外 | 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:30件 |
※宮野個人の実績件数
経歴
1964年、東京(六本木)生まれ。叔父・叔母がヨーロッパで多くの受賞歴を持つ一級建築士で、幼少期より不動産や建築が身近なものとして育つ。
日本大学卒業後、カリフォルニア州立大学アーバイン校(UCI)に入学。帰国後は大手ビルオーナー会社に就職し、不動産売買を行う。
平成3年、不動産業者免許を取得し、株式会社ティー・エム・プランニングを設立。同時期より第二東京弁護士会の (故)田宮 甫先生に師事し20年以上に渡り民法・民事執行法を学ぶ。
現在まで30年以上、「事件もの」「訴訟絡み」のいわゆる「訳あり物件」のトラブル解決・売買の実績を積む。
またバブル崩壊後の不良債権処理に伴う不動産トラブルについて、国内・海外大手企業のアドバイザーも兼務し数多くの事案を解決。
日本だけでなくアメリカや中国の訳あり物件のトラブル解決・売買にも実績があり、国内・海外の不動産トラブル解決に精通。米国には不動産投資会社を持ち、ハワイ(ワイキキ・アラモアナエリア)・ロサンゼルス(ハリウッド・ビバリーヒルズ・サンタモニカエリア)を中心に事業を行う。