接道義務違反で再建築不可に! 接道義務とは?どんな問題が?

接道義務違反で再建築不可に!接道義務とは?どんな問題が?
2022年12月26日(月)

再建築不可物件とは、法律で建て替えや増築、改築などが認められていない物件のことを指します。なぜ再建築ができないのか?そのキーワードとなるのは「接道義務」です。

今回は再建築不可の原因となる接道義務や再建築可能にするための方法やメリット、接道義務にまつわるトラブルについて解説します。再建築不可物件を活用するためには、建築基準法や接道義務について正しく知り、適切に対処しましょう。

物件が再建築不可になる要因である接道義務

再建築不可物件が再建築不可である要因は接道義務を満たしていないことにあります。建築基準法第43条では、「都市計画区域内の建築物の敷地は道路に2m以上接していなければならない」と定められています。この条件を満たしていない場合、建築許可が下りません。

再建築不可物件は道路に接していない、接している道路が基準を満たしていない、接している面が少ないなど、何らかの理由で接道義務を満たしていないため、再建築が認められないのです。

接道義務とは

接道義務が定められている目的としては地域住民の安全確保が挙げられます。建物が地震や火事などの災害で被災した場合、敷地が道路に接していれば住民が避難ができて、消防車や救急車、パトカーなどの緊急車両がいち早く駆けつけることができます。逆に道路に接していないと逃げ遅れたり緊急車両が到着できなかったりして、人命や財産が失われたり被害が拡大したりするリスクが高くなってしまいます。皆が接道義務を守って住宅を建てているからこそ、街の安全が守られているのです。

しかし、接道義務が設けられたのは1950年であり、それ以前は道路に接していない敷地にも自由に建物を建てることができました。接道義務がない頃に建てられた建物が、今の法律に合致しなくなった結果として再建築不可物件になってしまったというケースが非常に多いです。

建築基準法に定める道路

接道義務を満たせば建築許可が下りて建物を建てることができます。しかし、「道路にさえ接していれば接道義務を満たしている」「道路なら何でもいい」とはなりません。接している道路は建築基準法上の「道路」として認められているものである必要があります。

建築基準法第42条では「道路とは何を指すか」という定義がなされています。原則幅員4m以上(一部地域では6m以上)で、以下に該当するものが道路と呼ばれます。該当しないような道に接している場合、法律上は道路として認められず、接道義務を満たすことはできません。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

建築基準法条の道路
42条1項1号 道路法による道路
まず挙げられるのが、道路法上で定められた道路です。別名「道路法による道路」と呼ばれ、具体的には国が管理している国道、都道府県が管理している都道・道道・府道・県道、市町村が管理している市町村道などが挙げられます。いわゆる「公道」と呼ばれているものです。幅員4m以上あるこれらの道路に敷地が2m以上接していれば問題ありません。
42条1項2号 2号道路
別名「2号道路」と呼ばれます。都市計画法、土地区画整理法、都市開発法、新都市基盤整備法、大都市法、旧住宅造成事業に関する法律などの法律に基づいて整備された道路のことを指します。たとえば住宅分譲地にディベロッパーが設けた道路などが挙げられます。こうした道路はもともと私道という扱いになりますが、整備後に地方自治体に寄付することで、道路と同じ扱いになります。
42条1項3号 既存道路
道路法上の道路(42条1項1号)、2号道路(42条1項2号)以外の道路を指し、「既存道路」と呼ばれます。建築基準法が制定されたのは1950年11月23日ですが、それ以前より存在していた道路で、幅員4m以上のものが該当します。管理はしていないものの、所有者が国や地方自治体になっている道路などがこれに当てはまります。
42条1項4号 計画道路
別名「計画道路」と呼ばれます。道路法や都市計画法、土地区画整理法、都市開発法、新都市基盤整備法、大都市法などの法律に基づいて2年以内に新設される予定がある道路、あるいは既存の道路で拡幅などの変更が加えられる予定があり、行政庁から指定を受けているものを指します。道路整備事業が決定して用地が買収済みの場合、計画道路となっている可能性があります。計画道路の用地に2m以上接していれば接道義務を満たすことが可能です。なお、道路の完成までに2年以上かかる場合でも、行政庁からの指定が取り消されていない限り計画道路に該当します。
42条1項5号 位置指定道路
別名「位置指定道路」と呼ばれます。幅員4m以上ある私道で、特定行政庁が指定したものを指します。2号道路と似ていますが、位置指定道路の場合は都市計画法や土地区画整理法などの法律に従って整備されていないものが該当します。たとえば、不動産業者が土地を区割りするために敷いた私道などが挙げられます。
42条2項 みなし道路,2項道路
「みなし道路」「2項道路」とも呼ばれます。建築基準法制定前からある幅員4m未満の道路で、特定行政庁が指定したものが該当します。1950年以前は接道義務というルールがなかったため、接している道路の幅員が4m未満でも問題はありませんでした。しかし、新たに建築基準法が制定されたことで、多くの建物が接道義務を満たすことができなくなってしまうため、このような規定が設けられたのです。みなし道路に接している場合、セットバックして幅員4mを確保することで、接道義務を満たすことができます。
42条2項 43条但し書き道路
「43条但し書き道路」とも呼ばれます。道路以外の土地で、道路と同じような用途で使えるものを指します。具体的には公園や緑地、広場、農道、河川管理道路、港湾施設道路などです。これらに接している場合は建築審査会に申請を出して、交通上、安全上、防火上、衛生上の支障がないと認められた場合に、接道義務を満たしているとして建築許可が下りる可能性があります。
旗竿地

接道義務を満たしていない敷地でよくあるのが「旗竿地」であるというケースです。旗竿地とは間口があってその奥に敷地が広がっているような土地で、上から見ると旗のような形状をしていることから、このように呼ばれるようになりました。

前述のとおり、接道義務を満たすためには幅員4m以上の道路に2m以上敷地が接していなければなりません。たとえ接している道路が4m以上の幅であっても、接している部分が2m以下であれば再建築不可となってしまいます。間口が狭い旗竿地の場合、接道義務を満たしていない可能性もあるので、しっかりと確認しておくことが大切です

接道義務違反による再建築不可物件

建物を建築する際には、建築確認申請を行い、行政から「建築基準法違反がないかどうか?」を審査してもらう必要があります。上記に該当する道路に敷地が2m以上接していない場合、建築許可が下りず再建築不可物件となってしまいます。一見すると十分な幅があって人や車が通行している道であっても、建築基準法上の道路として認められず、再建築不可となってしまうケースも少なくありません。逆に私道であってもそれが道路に該当して建築許可が下りる場合もあります。

まずは「敷地に接している道が建築基準法の道路であるかどうか?」「幅員4m以上の道路に2m以上接しているか?」を確認しましょう。

例外的に再建築可能な物件

道路に接していなくても例外的に接道義務を満たしていると認められる場合があります。それが、前述の42条2項で定められている「43条但し書き道路」です。敷地の隣に道路の代わりとなるような土地があれば、接道義務を満たしているとみなされる可能性があります。建築審査会の審査を受ける必要がありますが、公園や緑地、農道などに接している場合は再建築できる可能性があります。

また、建築確認申請が不要な物件は接道義務を満たしていなくても再建築は可能です。「2階以下で延床面積500㎡以下、高さ13m以下、軒高9m以下の木造建築物」もしくは「1階建てで延床面積200m以下の木造以外の建築物」が該当します。

接道義務を満たしていると判断されるためには

  • セットバック
  • 隣地を借りる・買取
  • 隣地一時使用の賃貸借契約
  • 位置指定道路申請
  • 43条但し書き申請

現状では再建築不可状態であっても、接道義務さえ満たせば建築許可が下りて再建築が可能となります。実際に再建築不可物件を再建築可能な状態にして建て替えや増築、リフォームするケースは数多くあります。ここからは接道義務を満たすための手段についてご紹介します。

セットバック

セットバックとは「後退」という意味です。自分の土地を後退させて行政に明け渡すことで、接道義務を満たすことができます。特に接している道路の幅員が足りない場合などに適している方法です。

たとえば接している道路の幅が3.8mであれば、自分の土地を0.2m明け渡し、それを道路として認めてもらえば、建築許可が下りるようになります。また、自分の土地を0.1m、向かいの土地を0.1mずつ明け渡すといった方法をとることも可能です。

後述する方法と比較して費用がそれほどかからないというメリットがありますが、土地が狭くなってしまうというデメリットもあります。

隣地を借りる・買取

隣地が接道義務を満たしている場合、借りたり買収したりして合筆(土地同士を合併)することで、自分の敷地も接道義務を満たすことができます。隣地と合筆することで、自分の土地が広くなるというメリットもあります。

一方で、借りたり買収したりするのに多額の費用がかかること、そもそも隣地に人が住んでいるなど使われている状態では断られる可能性が高いというのがデメリットです。また、足元を見て不当に高額な賃料や代金を請求してきたり金品を要求してきたりするケースもあり得ます。

隣地一時使用の賃貸借契約

隣地を一時的に借りるという手段もあります。借りた土地を合筆して建築許可申請を出し、工事が終了した後に隣人に土地を返却するという方法です。特に旗竿地で間口が狭い場合によく行われます。

隣地をまるごと借りたり買い取ったりするよりも費用がかからないのがメリットです。一方で断られる可能性があることと、足元を見られて高額な賃料を請求されるリスクもあるということがデメリットとして挙げられます

位置指定道路申請

敷地が私道に接している場合、特定行政庁から位置指定道路に指定してもらうことで、接道義務を満たせる可能性があります。私道が存在する市区町村の役所で手続きを行い、協議や現地調査を経て指定を受けるという流れになります。

申請を行うことで再建築不可物件を解消できる可能性がありますが、幅員4m以上でなければならない、隅切りや排水設備を設けなければならない、通り抜け道路でなければならないなど、条件がさまざまなあり、それらを満たしていないと指定されないため、ハードルは結構高いです

43条但し書き申請

敷地が公園や緑地などの広大な土地や農道などに接している場合、43条但し書き申請を行うことで、接道義務を満たせる可能性があります。建築審査会に申請手続きを行い、審査を経て交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認められた場合、建築許可を得ることができます。

ただし、敷地が道路の代替となる土地に接していることが前提です。但し書き申請はあくまで道路以外のものを例外的に道路として扱うという特例措置であり、1回申請すればずっと有効であるというものではありません。建築工事のたびに申請を行わなければならないのがデメリットです

接道義務を満たすメリット

再建築不可物件を活用するにせよ、売却するにせよ、接道義務を満たすことで問題解決へ一歩前進できるかもしれません。接道義務を満たせば、「再建築・増改築が可能になる」「売却金額が相場通りになる」という、2つの大きなメリットが得られます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

再建築・増改築が可能になる

接道義務を満たせば建築許可が下りて再建築可能になります。再建築不可状態では建物をそのまま残すか、更地にしてしまうかといった選択肢しかありませんでしたが、再建築が可能な状態になれば、建て替えやリフォーム、増築もできるようになり、物件活用の自由度が大幅に上昇します

特に再建築不可物件に住み続ける予定がある方、活用を考えられている方は、接道義務を満たすという方向性も検討してみてもいいかもしれません。ただし、前述のとおり再建築可能な状態にするためには、多くの手間とコストがかかることには要注意です

売却金額が相場通りになる

不動産市場では「再建築不可」というだけで、物件の資産価値が大きく下がってしまいます。良くて周辺の物件の7割程度、多くの場合、半額程度でしか売れません。その理由としては、やはり再建築ができず、建て替えや増改築ができないという自由度の低さがあります。

接道義務を満たすことで、物件の資産価値を引き下げている原因を解消できるため、物件を相場通りの価格で売れる可能性が高まります。しかし、そもそも「手間や費用をかけてまで相場通りの価格で売る必要があるのか?」という点が問題です。再建築可能な状態にするための費用がかかりすぎてしまった場合、結局損をする可能性があります

こんな接道義務トラブル

接道義務を満たしているかどうか?を確認することは建築を行う上で非常に重要です。仮に接道義務を満たしていないことが発覚した場合、建て替えや増改築ができなくなり、物件の資産価値も下がってしまいます。最後に、接道義務にまつわるよくあるトラブルについて見ていきましょう。

接道している道路が私道だった

非常によくあるトラブルとして挙げられるのが、接しているのが実は私道であったというケースです。人や車が頻繁に行き来している道路でも、それが個人の所有する私道である場合、接道義務を満たしていることにはなりません。位置指定道路申請を行い、行政から道路として認めてもらう必要があります。

接している道路が建築基準法上の道路に該当するかどうかは管轄の市区町村役場で調べることができます。建て替えや増改築の予定がある場合、あるいは物件を手放す場合は、一度調べてみましょう

どんな方法でも接道義務を満たせなかった

セットバックや隣地を利用する、位置指定道路や43条但し書き道路申請を行うなど、接道義務を満たす方法はさまざまあります。とはいえ、これらの手段をとったとしても必ず成功するわけではありません。隣地が使えない場合もあれば、申請が通らないケースもあります。

さまざまな手段を試しても再建築不可状態を解消できないとなると、それまでかけた手間と費用が無駄になってしまいかねません。接道義務を満たすこと自体は不可能ではありませんが、非常にハードルが高いことも覚悟しておく必要があります

接道義務を満たしていなくても売却できる

接道義務を満たしていなくて持て余している物件は売却するのも一つの手段です。一般的に再建築不可物件は売りにくいと言われていますが、専門業者であればスムーズに売却できる可能性があります。

訳あり物件買取センターは再建築不可物件に特化した不動産買取業者です。接道義務を満たしていない状態の物件であっても、好条件で買取らせていただきます。隣地の利用や申請手続きなど、手間と費用をかけて再建築不可状態を解消していただく必要はありません

再建築不可物件の活用や処分にお困りでしたら、ぜひ私たちにご相談ください。

監修者

宮野 啓一

株式会社ティー・エム・プランニング 代表取締役

国内 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:150件
国内 訳あり物件売買取引件数:1150件
海外 不動産トラブルの訴訟・裁判解決件数:30件

※宮野個人の実績件数

宮野啓一

経歴

1964年、東京(六本木)生まれ。叔父・叔母がヨーロッパで多くの受賞歴を持つ一級建築士で、幼少期より不動産や建築が身近なものとして育つ。
日本大学卒業後、カリフォルニア州立大学アーバイン校(UCI)に入学。帰国後は大手ビルオーナー会社に就職し、不動産売買を行う。
平成3年、不動産業者免許を取得し、株式会社ティー・エム・プランニングを設立。同時期より第二東京弁護士会の (故)田宮 甫先生に師事し20年以上に渡り民法・民事執行法を学ぶ。
現在まで30年以上、「事件もの」「訴訟絡み」のいわゆる「訳あり物件」のトラブル解決・売買の実績を積む。
またバブル崩壊後の不良債権処理に伴う不動産トラブルについて、国内・海外大手企業のアドバイザーも兼務し数多くの事案を解決。
日本だけでなくアメリカや中国の訳あり物件のトラブル解決・売買にも実績があり、国内・海外の不動産トラブル解決に精通。米国には不動産投資会社を持ち、ハワイ(ワイキキ・アラモアナエリア)・ロサンゼルス(ハリウッド・ビバリーヒルズ・サンタモニカエリア)を中心に事業を行う。

対象エリア東京都・神奈川県

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